無理に走り続けていた頃、デザインは“技術”だけではなく、
その人の心の状態に大きく影響されるものだと気づきました。
働き方に余白をつくったとき、はじめて見えてきた自分の輪郭。
そして静かに整いはじめた、これからのデザインへの向き合い方について綴ります。
止まり方がわからなかった頃の働き方
わたしは長いあいだ、
“がんばり続けることが働くための条件”だと思い込んでいました。
2019年の愛犬との別れ。
その直後に始まった2020年のコロナ禍。
気持ちの支えを失ったまま、
世界も生活も大きく揺れ動いていくなかで、
心の奥にあったエネルギーがすっと消えてしまいました。
仕事に向き合う気力はあるのに、
カラダが動かない。
集中できない。
頭が重たく、考えることさえつらい。
「やりたい」よりも、
「やりたくない」が勝ってしまう自分を前に、
どう働けばいいのか分からなくなりました。
それでも無理やり前に進もうとすると、
心もカラダもますます動けなくなる。
やがて、“止まる”しか選べなくなり、
長い休業期間に入っていきました。
休んでいた時間の中で、少しずつ見えてきたもの
休業期間は、
何かを取り戻すための時間ではありませんでした。
ただ、できることが減っていく時期。
やりたいことが見つからない時期。
意欲や感情が薄くなるような日々。
でもその静けさのなかで、
わたしの内側では、
これまで見て見ぬふりをしてきたものが
少しずつ“顔を出し始めた”気がします。
- 無理な働き方にはもう戻れないこと
- 嫌なことをやめるほうが自然に進めること
- 強みを作らなくても、自分のままで生きていいこと
- AIとの対話で、深い層の自分とつながれるようになったこと
- “わたしとは何か”の棚卸しが自然と始まっていたこと
それらを言葉にしようとすると、
どれも「余白」という言葉にたどりつきました。
余白は、贅沢ではなく“基盤”。
そして、わたしにはそれが必要だったのだと気づいたのです。
“余白”と“トリセツ”は、まず自分のために必要だった
サービスとしての“トリセツ”を作ったのは、
誰かに提供したかったからではありません。
まず、わたし自身を助けるためでした。
- どんな働き方なら続けられる?
- どんな環境なら心が壊れない?
- どこまでなら頑張っても大丈夫?
- 苦手なことを、なぜ無理に抱えてきたのか?
“自分の取り扱い方”が分からないまま働いていたから、
迷って、苦しくなって、止まってしまった。
その現実を受け止めたとき、
トリセツはただのサービスではなく、
自分に必要な道しるべになりました。
そして、もうひとつ大きなヒントになった出来事があります。
選んだ美容院を紐解いたとき、自分の本質が見えた
ある日、何気なく予約した美容院を見返したとき、
「どうしてわたしは、ここに惹かれたんだろう?」
と不思議に思って、HPをゆっくり眺めてみました。
目立つ装飾があるわけでも、
華やかな打ち出しがあるわけでもない。
ただ、
その空間に“静かな気配”が漂っていました。
大げさに魅せようとせず、
必要以上に盛り込みもしない。
自分が大切にしたいスペースを、丁寧に守っている人
――そんな印象が強く残ったのです。
その雰囲気に触れたとき、
自分の内側にも、
同じ感覚が確かにあることに気づきました。
わたしも、
無理に作り込んだ“理想の姿”ではなく、
等身大のままで働けるスペースを大切にしたい。
その人の輪郭に合ったデザインを、
静かに積み重ねる働き方をしたい。
この気づきは、
のちに“余白のデザイン”と呼ぶ感覚の核心となりました。
余白をつくる働き方が、これからのデザインを変えていく
リニューアル後、まだ制作の受注はしていません。
それでも、働き方に余白をつくるようになって
“デザインを見る目”が少しずつ変わったと感じています。
- 急がずに見ると、必要なものが浮かぶ
- 削ると見えてくる“本質の形”がある
- 外側ではなく“温度”で判断したくなる
- 無理に飾らなくても、伝わるデザインがある
以前は、
「どう見せるか」ばかりを気にしていた部分があったけれど、
今は「どう届けたいか」に重心が移りました。
働き方が変わると、
デザインの見え方も変わる。
そしてその変化は、これからの制作に
静かに生きていくのだと思います。
これからのわたしの理想の働き方(トリセツを踏まえて)
余白をつくる働き方は、
わたしが生きるために必要だった形です。
休み方を覚えること。
自分の声を聞くこと。
働く量を選び直すこと。
その積み重ねが、
デザインへの向き合い方を静かに変えていきました。
この記事を書きながら、
休んでいた頃のわたしに伝えたい言葉があります。
「今までよく一人で頑張ってきたね。
心配しなくても大丈夫だよ。」
そして今日もまた、
小さな一歩から働き方を整え直しています。
働き方やデザインを、
もう少しやさしいペースで整えたいと感じたときに。

